top of page
石津 博睦氏 添付資料
■「ベンチャー起業論」におけるプロジェクトの考え方

ベンチャー起業論では、千利休の教えである「守破離」の考え方を取り入れていますが、「守破離」とは、茶道、武道、芸術等、あるいはスポーツや仕事等、様々な分野における個人のスキルや成長のプロセスを表した言葉です。

学生が企業と連携して活動するインターンシップ・プロジェクトと、この「守破離」の考え方が、正直言って、私の頭の中では、どうもしっくり融合していないので、私なりの解釈で整理してみました。

 

そもそも「プロジェクト」とは何か?

プロジェクトとは、ある目標を達成するために、一定期間内に実施される一連の活動のことです。

プロジェクトは、明確な開始日と終了日、限られたリソース(人員、予算、時間、技術など)を持ち、特定の成果物や成果を生み出すことを目的としています。

つまり、プロジェクトには必ずスタートゴールアウトプットが存在しなくてはなりません。

 

このことから、目標達成のプロセスであるプロジェクトと成長のプロセスである「守破離」との関係性は、下図の通り、連続性のある独立したプロジェクトに分解すると実にわかりやすくなります。

 

 ●「守」プロジェクト ⇒ 現状分析プロジェクト

 ●「破」プロジェクト ⇒ 問題発見プロジェクト

 ●「離」プロジェクト ⇒ 問題解決プロジェクト

 

また、学生執行部については、各プロジェクトを統括する役割を担いますが、これも一つのプロジェクトとして捉えることができます。企業では、PMO(Project Management Office)と言われています

 

そして、各プロジェクトにも、それぞれのスタートとゴールとアウトプットを決め、目標達成のためにさらに細かいタスク(作業)に分解する必要があります。

例えば、 「守」プロジェクトであれば、

・業界分析、市場分析、自社分析、他社分析、顧客分析・・・・・

2_edited.jpg
■プロジェクトの実行プロセス
3_edited_edited.jpg

各プロジェクトを着実に実行するには、PDCAサイクルを回すことが基本となります。

PDCAサイクルは、学生の皆さんも一度は耳にしたことがある定番のフレームワークで、以下の4つのプロセスを継続的に循環させながら課題解決していく手法です。

 ・Plan(計画)  ⇒現場の課題を洗い出し実行計画を立てる

 ・Do(実行)    ⇒計画に基づき実行する

 ・Check(測定・評価)  ⇒計画通りに実行されたか点検する

 ・Action(対策・改善)  ⇒内容を見直し、次の計画に反映する

一方、最近では、前例や過去のデータに捕らわれない0から1を作り出す新規事業開発などのイノベーションを生むために、OODA(ウーダ)ループと呼ばれるフレームワークが採用されています。

米空軍の軍事戦略から生まれており、 PDCAサイクルと比べて状況への即応性に優れ、変化の早い昨今の環境において、チャンスを逃さないための手法なので、こちらの方が、スピード感を求める短期間のベンチャー起業論には適しているかもしれませんね。

 ・Observe(観察)  ⇒客観的なデータを集めて整理する

 ・Orient(状況判断)  ⇒状況を分析して仮説を立てる

 ・Decide(意志決定)   ⇒仮説をもとに意思決定を行う

 ・Act(行動)     ⇒行動・実行する

■学生の皆さんへ一言

私は、30数年間にわたり、IT企業において、様々なシステム開発プロジェクトを経験してきましたが、その半分以上は、プロジェクトのマネジメント業務を担当してきました。

新規開発プロジェクトはもちろんのこと、旧システムから新システムへの更改プロジェクトだったり、よじれ修復のためのトラブルシューティングプロジェクトだったりと、不眠不休の今では考えられないようなデタラメな働き方をした記憶が蘇ってきます。

 

皆さんも、大学卒業後は、ほとんどの方が社会人として企業に入社されると思いますが、その企業において組織目標を達成するために何らかの役割を任せられるでしょう。

この組織目標や役割を全うすることは、今、皆さんが実践しているプロジェクト活動と同じことなのです。

 

そして、そのプロジェクト活動は、同社内の複数部署を横断したプロジェクトだったり、同業他社と連携したプロジェクトだったりと、経営理念に基づき規模や構成も複雑化、大規模化していきます。

このことも、今まさに皆さんが体験している、複数の他大学やインターン先企業と連携して活動しているベンチャー起業論そのものではないでしょうか。

 

また、ベンチャー起業論におけるプロジェクトのゴール(目標)とは、言わずもがなビジネスプランコンテストで入賞することではなく、企業課題の解決です。

もしくは、学生メンバーの一人ひとりが、課題解決のプロセスを経験し、繰り返し習慣化することにあると考えます。

ここが、実際の企業におけるプロジェクト活動とは大きく違うところで、企業の場合はゴールした際のアウトプットのみが評価されます。一方、ベンチャー起業論では、ゴールまでのプロセスの方がむしろ重要であり、「守破離」に基づいて評価されるのです。

メンターとしてここ数年のプロジェクト活動を見てきましたが、コロナ禍が功を奏してか、各プロジェクトやメンバー間での情報共有と切磋琢磨がオンラインにより活性化され、ビジネスプランコンテストのクオリティが年々レベルアップしていることを感じています。

あえて数値評価でランキングせざるを得ませんが、各プロジェクトとも各々のプロジェクト特性に応じたパフォーマンスが大差なく発揮されていると思います。

 

最後に、学生の皆さんに提案を一言。

このベンチャー起業論のプロジェクト活動を終えた時に、入賞したプロジェクトも入賞しなかったプロジェクトも、学生の皆さんは何を学んだかを必ず振り返ってみて下さい。

成功も失敗も含めてきっと何か心に刻まれた経験や実績があるはずです。

そして、一人ひとりが自分自身への表彰状を贈ってみてはいかがでしょうか。

例えば、「頼りがいがあったで賞」 「数字に拘ったで賞」 「すぐに行動したで賞」「いつも笑顔で賞」など。

そうやって言語化することで、皆さんが自身の強みを意識することができ、今後のプロジェクト活動や、ひいては、社会人としても成長していける原動力になるのではないかと考えます。

これからも一緒に頑張りましょう!!

bottom of page