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松本百合子氏

「FJLS」福岡日本語学校教諭

「ふくともメンバーとの一日」  


留学生のことが知りたいです。

2020年に、長年勤めた日本語学校を定年退職した。引き続き、再雇用で留学生管理の仕事は続けるものの、空いた時間を貢献できれば、と思い、阿比留教授がコーディネートされている、ベンチャー起業論のお手伝いをする事にした。そうして、2021年にふくともメンバーと知り合った。「ふくとも」とは、ベンチャー起業論において、留学生に関するプロジェクトを企画するグループ。リーダーの西久保君は、熱意溢れる若者ではあるものの、私に言わせると、少々勉強不足。「僕たちは、留学生の就職支援をしてあげたいと思います!」と、語る西久保君。「まだ、就職活動さえも経験した事がないあなた達が、留学生にどう就職の支援をするの?それより、今、福岡にどれだけの人数の留学生が居て、国籍はどうなのか、調べてみた?ベンチャー起業論では、まず会社の概要を調べるよね。では、留学生を扱うグループならば、まずは福岡県の留学生の事を知ろうとする事が大切なのでは?」と、私が言うと、押し黙ってしまったメンバーたち。少し、言い過ぎたかな、と思いきや、次の日、早速、次回アポイントの連絡をしてきた、ふくともメンバー。「松本さんが言うように、僕たちは、留学生に対し勉強不足でした。ですので、留学生の事が知りたいです。早速ですが、御校の授業の様子や、留学生の様子を見学させて貰いのですが、よろしいでしょうか?」との事。こういう行動力は、ベンチャー起業論の大学生ならではだな、と、嬉しくなり、私は早速、校長、教務、総務にこの事を告げた。



授業参加で留学生全員から大拍手!

総務の外国人スタッフは大歓迎だったが、教務の先生方はいささか訝し気味。日本語教師は元来、生真面目なタイプが多く、部外者が授業に入るのを好まない。それでなくても日本語のカリキュラムは文字語彙の反復学習が多く、「大学生が見ても面白くないと思いますよ」と、教務主任は斜め目線。私は、「まあまあ、そう言わず、同世代の大学生と同じ教室に居るというだけでも、留学生には刺激になると思うよ。ぜひ、見学させてあげてよ」と、教務主任を説得した。そうして、迎えた学校見学の当日。早めに学校に着いた、ふくともリーダーと副リーダーの3人。ベンチャー起業論の名刺を持って、校長、総務主任、教務主任に丁寧にご挨拶。つかみは上々で、早速、授業見学へ。教務主任自らのクラスへ誘導される3人。私も、恐る恐るドア越しに様子を伺っていたが、私の心配はよそに、授業は次第に盛り上がっていった。今までに習った文字語彙を使って、1分間スピーチをする流れになると、留学生の一人から、「大学生のスピーチが聞きたい」と声があがる。途端に、留学生全員から大拍手が起こった。すると、その声に応えるように、ふくとも大学生は、躊躇する事なく、教壇の前にたち、それぞれの思いを留学生に熱く語ってくれた。留学生は大喜びで、目をキラキラさせながら、大学生のスピーチに聞き入った。私は臨機応変で堂々とした振る舞いのふくとも大学生に、とても感心した。そして、この大学生の言動は、留学生の心に長く残るだろうと、思わず胸が熱くなった。



掲示板の留学生の目標『日本人の友達を作る』

授業が終わると、ふくともメンバー達は校長室に招かれ、日本語学校の現状を、直にインタビューする機会に恵まれた。校長は、まっすぐな瞳でストレートに聞いてくるメンバーの質問に、この業界の裏話まで詳しく語ってくれた。校長も、地元の大学生が、この業界に興味を持ってくれた事が嬉しかったようである。

西久保君からは、「松本さん、掲示板に書かれた留学生の目標に、『日本人の友達を作る』と書かれたスローガンがありました。僕はこの一言が忘れられません。そうだ、僕たちはまず、留学生と友達になる事から始めればいいんだ、と、強く思いました。」という感想が告げられた。私はこの西久保君の言葉のひとつひとつが、嬉しくてならなかった。「留学生と友達になりたいです。」という言葉は誰もが使う。しかし、実際に日本語学校に赴き、留学生の声を直に聞き、共に学ぶ時間を経験した者とそうでない者は、雲泥の差があるように思う。


そして、後日談。

「松本先生!先日、学校見学に来た福大生からお礼のメールをもらいました。校長だけでなく、私にまで。すごいですね。行き届いていますね。とても感心しました!」とは、学校見学に否定的だった教務主任の一言。「そうでしょうとも!この大学生達は阿比留教授の指導の下、将来のリーダーになるべく勉強を続けている学生達なのよ!今後とも福大ベンチャー起業論の学生たちをよろしくね!」と、鼻高々になる、メンター松本。私にとっても、素晴らしい思い出となった、ふくともメンバーとの一日の話である。


松本百合子氏
松本百合子氏
松本百合子氏
松本百合子氏
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