2022年05月06日講義
映画監督
錦織 良成 氏
いつもお世話になっている皆様へ
田舎の豊かさ自然の恵みを
実感させてくれる映画
5月6日の講師は映画監督の映画監督の錦織良成さんです。錦織監督は、日本の原風景の映画を島根を舞台にとって来られました。これまで、白い船、ミラクルバナナ、レイルウェイズ、うん、何?、渾身、たたら侍などを通して、日本の自然、地域、文化の魅力を発信しておられます。現在、高津川という日本で唯一のダムが一つもない一級河川を舞台にした映画が上映中です。私は、監督が作られた映画はほとんど見ていますが、どの映画も心が洗われる素晴らしいもので、私のように、対馬の田舎で生まれたものにとって、田舎の生活の豊かさ、自然の恵みのありがたさを実感させてくれ、日本に生まれたことを心から感謝したくなるような映画です。
空間軸と時間軸を超越して
人間を優しく、力強く描く
島根が舞台になっているのですが、島根という一地域の映画にはなっておらず、日本人だけでなく、世界の原風景が同じものであることを実感させるものになっているのに驚かされます。よくぞ、ここまで深掘りされて、人間を描かれたというくらいに空間軸と時間軸を超越したところにある人間を優しく、そして力強く描いておられます。そういう意味で、監督の映画は、ネットで検索することで見れるもののありますので、多くの人に見て欲しいと思っています。
最貧国ハイチを舞台にした
「ミラクルバナナ」
これまでに見た映画で、その思いを強くしたものの一つに「ミラクルバナナ」(2006年公開)があります。この映画は、世界の最貧国であるハイチを舞台にしたもので、バナナから紙を作るという実際のプロジェクトをモチーフにした映画です。監督の映画は、緒形拳、小日向文世、宮崎美子さんなど大物の俳優がキャストで、音楽は角松敏生さんという贅沢なメンバーに支えられた実に見応えがある映画です。私は、この映画で驚いたのが、現地の葬式の場面でした。なぜ、驚いたかというと遠い地球の裏側の貧しい国の葬式が、私の田舎である対馬で体験した葬式と全く同じだったからです。私が、対馬にいたのは中学校までですから、1953年の誕生から1968年(15歳)までの時期になりますが、その頃の葬式は土葬でした。葬式自体も自宅で行われるのですが、お坊さんの読経で終わると、棺桶に入れられた遺体は、屋内から屋外へと移動します。家を出る際に、茶碗を床に投げた後に、庭を何周か回りそれから、町を練り歩き墓地ま移動します。その際に先頭に戒名などをかいた旗につづき、身近な人が棺桶を担ぎ、それに親族が続きます。町ではその様子を見る人が沿道で見送るのですが、これと全く同じ形で、ハイチの葬式が続いているのです。日本の葬式の原風景がこれと同じであるかどうかは私は知りませんが、私の葬式の原風景が、地球の裏側で見られるなんて全く予想もしていなかったので、これには本当に驚かされました。
遷宮と共に行われる古典相撲を
モチーフにした渾身
また、隠岐の島に伝わる古典相撲をモチーフにした映画、渾身(2013年公開)も見応えのある映画でした。この古典相撲は20年に一度の遷宮と共に行われる相撲です。私は、映画とは別にこの古典相撲を見たのですが、とても感動しました。たまたま、上場する前の「ユーグレナ」の社長である出雲充さんと一緒に見たのですが、相撲を支える島の人たちの熱い思いが伝わりました。確か、午後4時頃からスタートし、翌日のお昼頃まで続きます。
出場力士は200名で、必ず、同じ相手と2番相撲を取ります。最初に勝ったものは、次には勝ちを譲るので、必ず一勝一敗で終わることには地域の生きる知恵を感じました。また、呼び出しによる力士たちの紹介がとても面白く、一人ひとりを呼び出しと共に丁寧に近況を人柄が伝わるように説明するのです。この呼び出しに時間がかかるのですが、この地域人がいかに人を大切にしているかを実感しました。
いつか山笠をモチーフに映画を
福岡で映画塾開催できれば
渾身の映画を見て驚いたことがあります。それは、主人公が相撲に勝って、その賞品として、土俵の4本柱が贈られたのですが、その柱を運ぶときの掛け声が「オイさ、オイさ」と山笠の景色と重なって見えたことです。私は。山笠といえばふくやの川原正孝さんを思い出すのですが、川原さんにはベンチャー起業論の講師も最近までお願いしていたご縁で、監督を紹介し、この映画も見て頂いたのですが、川原さんにもこの映画にとても感動して頂き、監督のファンになっていただきました。渾身の上映の時には、ふくやさんにもたくさんの応援をしてもらいました。監督にも山笠を是非見て欲しいと言われ、コロナ前には山笠を櫛田神社の出口の1番見やすい場所で山笠を見せてもらいました。その時、びっくりすることが起きました。それは、山笠の一番山がスタートする直前の7月15日午前4時59分に場内アナウンスで「八雲立つ、出雲八重垣妻ごみに八重垣作るその八重垣を」という須佐之男命(すさのおのみこと)が八岐大蛇(やまたのおろち)を退治して、奇稲田姫(くしなだひめ)の危機を救った時に歌った歌が朗読され、山笠がスタートするのです。監督はその歌にとても感動され、山笠と出雲の神が繋がっていることから、いつか山笠をモチーフにした映画を作りたいと言ってくださいました。
今年、7月16日に第3回公益資本主義フォーラムを実施するために動いているところですが、考えてみれば、公益資本主義の考えを日頃から実践しておられる川原さんの心血を注いでおられる山笠を支えるいろんな人を取材し、今年で終わる島根映画塾を福岡で開催することができれば面白いだろうなと想像してしまいました。早速、監督にもこのフォーラムに参加して頂きたいとお願いしたところ快諾していただけたので、どのようなものにするかを考えてみたいと思っているところです。
今週の5月13日のベンチャー起業論の講師は、
サクラフォレストを運営しているココシスの岡部隆司さんです。
岡部さんはベンチャー起業論の想(=学生主体の運営)と同様、社員主体で企業運営されている会社です。社長は、社員の選挙で選ぶような中央集権ではない逆ピラミッドの組織を運営を心がけておられ、時代を先取りした方です。
講義は5月6日10時40分から14時半
(12:10分から13時までの昼食時間を除く)
教室はAB01
ZOOMで参加する人は
ID:7176563939
Pass: 717656
2022年5月9日 阿比留正弘