2021年 7月2日講義
㈱ジャンヌマリー 代表取締役
大倉 紀子氏
いつもお世話になっている皆様へ
ベンチャー起業論が生まれるきっかけ
今回の講師は1998年の通産省が「若者会社をつくろう」というシンポジュームを福岡大学で開催したときのゲストだった大倉紀子さんが講師でした。実はこのシンポジュームは、ベンチャー起業論が生まれるきっかけとなったイベントで、そのコーディネーターを私が任され、キーノートスピーカーとしてアントレプレナーセンターの福島正伸さんがつとめ、起業の魅力を訴えられた。他のゲストとして、当時はやっていた「たまごっち」の発案者でその会社の社長だった横井昭裕氏、孫正義さんの弟で、Yahoo Japanを東大在学中に
立ち上げた孫泰蔵などの著名人がいた。
ベンチャー起業論の優勝請負人
そのゲストの一人だった、大倉さんはその後、スタートしたベンチャー起業論の講師として、唯一継続している人だ。大倉さんは、繊維関係を得意とし、事務所には34名のデザイナーを擁する日本で最大規模のジャンヌマリーGemdar merieという名のデザイナー事務所だ。福岡の大名と東京北青山にオフィスを構え、大企業を顧客としその企業の商品だけでなく、マーケティング戦略を含んだ企画をデザインし、提案している。
大倉さんはベンチャー起業論のプロジェクト活動とも大きな関係がある。過去に何回か大倉さんが、プロジェクトに関わってもらったが、大倉さんが関わるとそのチームは、優勝に絡んでくるし、またそのメンバーは、就職と言う形で、ジャンヌマリーを就職先として選ぶ。その意味で、ベンチャー起業論においては優勝請負人ともいうべきプレゼンの専門家である。これは、大倉さんが日常の業務で、電通などの強豪と戦い、仕事をとってきた仕事の進め方と世の中の変化などのトレンドをきちんとデータで捉え、説得力のある仕事をされてきたことと無縁ではない。
ジャンヌマリーPJで培った行動力と発想力
今回の講義でも、大倉さんの指導のもとで、アジアの国々とのビジネス交流を目的としたプロジェクトを2年間行った榎田さとかさんが前半の講義では登場した。榎田さんは1年目にはTouchi of Thai というテーマでタイの繊維産の魅力を伝えるために、福岡の大丸デパートを舞台とした展示会を行ったり、2年目には韓国からの訪日観光客をターゲットにしプロジェクトを実施した。韓国からの観光客ががどのような商品を日本で購入しているのかを空港でのレシート調査という独自のやりたかで調査して、誰も予想もしなかった1位 こんにゃくばたけ」2位 キットカット 3位 ほろよい などの商品が上位を占めていることを明らかにした。
これだけでも、皆驚いたのだが、なぜそのような順位になったのかを独自の調査で明らかにしたことで更に、驚かされた。彼女たちは、韓国人留学生5名を調査団の仲間に引き入れ、彼らとともに実際に韓国に乗り込んで、そして韓国の大学のキャンパスなどで現地調査を行ったのだ。そのような調査を通じて、この順位が韓国内のSNS、ネイバーのブログで、日本での土産ランキングとして紹介されたものと対応していることを突き止めたのだった。私は、行動力、学生のネットワークの有効な活用など、若者の自由な発想にとても感銘を受けた。
新入社員の本音と哲学の90分
このような大活躍をした榎田さんだったので、卒業後はすぐに大倉さんの会社に就職するものと考えていたが、話はそう簡単には行かなかった。彼女には大好きなおじいちゃんや家族がいたので、地元で就職したいと考えていた。彼女が興味あった大丸の就職試験をうけたが競争率は200倍で、その競争を勝ち抜いて内定をもらったことから、おじいちゃん孝行の気持ちから大丸に就職した。彼女はとても家族思いなのだ。しかし、大丸に就職して、やりたいと思っていた企画の仕事をさせてもらえないことで大いに悩んだ末、大倉さんの会社に昨年の9月から入社して、今回の講義に大倉さんと二人で現れたのだった。
私は、いつも感心していたのが、大倉さんが社員の思いをとても大切にされることだ。今回、大倉さんは二コマの講義のうち最初の一コマである90分を、入社して間もない榎田さんに任せ、彼女がどんな学生生活をして、就職し悩み、そして、ジャンヌマリーに就職して、今何を考えているかを、正直に発表した。榎田さんも大倉さんに遠慮することもなしに本音で学生から社会人の気持ちの変化や、仕事の面白さを生き生きと語ってくれた。私は、社長の前で堂々と話す榎田さんを見ていて、このような自分の仕事に対する哲学を発表する場が色んな会社でもあれば、社員、経営者の双方にとって、また職場環境にとってもすごくいいものになるだろうなと思いながら聞いていた。
3時限目の大倉さんの話は、コロナの影響を受けた繊維業界の話と、現在、勢いのある企業はニトリ、シマムラ、ワークマンなど安さを売りにする企業ばかりで、「おしゃれから機能」へと変化していることがとても印象に残った。
今週のベンチャー起業論の講師は、桜フォレストの創業者である岡部隆司さんです。岡部さんは、社長がピラミッドの頂点に立つのではなく、逆ピラミッド経営と言って、社長も2年以上の社員の中から選挙で選ぶ、朝の朝礼も仲間への感謝の言葉などで、2時間以上かかるとか常識的ではない経営をされています。興味のある人は覗いてみてください。
7月の公開フォーラムの案内
いよいよ、、7月17日に開催される公益資本主義フォーラムが来週の土曜日になりました。是非、参加してほしいです。
できるだけ多くの人に拡散して、若者から日本を変えたいと思っています。
2021年7月6日 阿比留正弘