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2021年 6月25日講義

レオス・キャピタルワークス㈱ 代表取締役社長兼CIO

藤野 英人氏

いつもお世話になっている皆様へ

社長から平社員そしてアジアNo1投資会社の社長

 緊急事態宣言が開けたので久しぶりに、対面で講義を行った。今回の講師は、2003年に会社を立ち上げ現在運用資産が1兆円を超えアジア最大の投資信託の会社になったレオス・キャピタルワークスの創業者である藤野さんだった。藤野さんに講義をお願いした最初の年は、2005年だから17年前からということになる。2008年のリーマンショックでは、会社をやめようと思うほどの激震が会社に走ったらしいが、講義では全くそのような悲壮感はなかった。藤野さんの思い出として、会社をやめようと思ったときに相談したら、白水美樹さんから「理想の投信会社を作ると言う夢は本気ではなかったのか」と問われ、初心に戻ったと言われていたが、そのようなドラマあったことは、当時は全く知らなかった。創業者として会社を立ち上げたものの、リーマンショックでは、会社は他人の手に渡り、社長から平社員として、電話番をしていたと明るく話されていたが、その後、会社の株をある程度買い戻すまでになり、また、アジアNO1の投信会社の社長として復帰するという離れ業を実現された方でもある。このような藤野さんになぜ、私は、ベンチャー起業論の講師を依頼したのか?

学者の前に証券会社勤務経験

  実は、私は、大学を卒業後、恩師の柴田先生など周りの反対を押し切り、証言会社に就職した。柴田先生がいつも言われていた、経済学は社会病理学であるという言葉で、社会の現場を知らないと社会の病気を治す医者の気持ちなんてわかるわけがないと、証券会社を選んだ。証券会社にはすべての会社の情報が集まり、容易に社会の状況がわかると思ったからだ。しかし、実際に証券会社に就職してみると、過剰なノルマの世界を間近にみることになった。証券外務員試験に合格すると軒並み営業の世界へ、飛び込むことになった。お客さんから聞いた最初の言葉は「来たか街のダニ」だった。金融機関は雨の日には傘を貸さない。晴れているときに、傘を借りてくれとしつこく迫るというわけだ。証券外務員試験では「投資家保護について、しっかり学ぶのに」会社の現場はそれどころではないことを知った。私が一番、嫌だったのは、投資信託を販売することだった。

投資信託は、プロの運用者が素人の投資家の代わりに有利に運用することを謳い文句にしていたが、私には投資家のためより、会社が利益のほうが優先されているようにしか見えなかった。そのことを見切りをつけて大学に戻り、まずは普通の経済学を学び、学者になることに専念し、37年前に福岡大学に就職し、今に至る。

「理想の」投信販売

 投資信託が嫌いで、大学に逃げた私が、なんで、藤野さんや澤上さんや、セゾン投信の中野さん、ユニオン投信の清水さんなどと親しくしているかというと、このような投信は私が嫌いで辞めた投信ではない、「理想の」投信を販売しておられるからだ。私が嫌いだった投信は、証券会社の中の運用会社と、販売会社が手数料を取る主体としては別々の名前をもっといるが、実質的には一体であり、投資家とは利益相反になることが私には耐えられなかった。それに対して、上に述べたような独立系の投信会社は運用会社が個人投資家(ファンド仲間)に直接販売するもので、手数料が、驚くほど安いのが、特徴だ。投信会社と長期に亘って、同じ目標を共有しており、利益相反がないのが特徴だ。

  投資家との間での利益相反がない独立系の投信会社は、私が就職した頃のキャッチフレーズであった「間接金融から直接金融」を徐々に実現しているようにみえる。

 

働く会社を信頼できないサラリーマン

  藤野さんの講義で私が一番ショックを受けたのは、2019年にエデルマン・トラストバロメーターに掲載された「自分が働いている会社に対する信頼度」調査の結果だ。一位は89%のでインドネシア2位は86%の中国。日本はなんと最下位からひとつ上の59%で25位だという。日本の多くのサラリーマンが、自分が働く会社を信頼できないと感じながら、働いているというから驚きだ。藤野さんはいつも講義の中で、感謝することが最高の長期投資だと言われる。この投資には費用はかからないし、潜在的なリスクを除去してくれる最高の投資だという。藤野さんはいつもフェイスブックなどでも身の回りに存在するありがたいことを毎日書き留めることを推奨されているが、このような習慣をつけ、周囲の人の何気ない変化にも気づかれる能力の高さにも驚いた。たまたま、挨拶にきた松藤くんにも「君のこの青いシャツ似合ってるね」などと何気ない学生の変化にも、気づかれた。

人の幸せに基づかない繁栄は永続的ではない

  藤野さんの会社は、最近、運用資産残高が一兆円を超え、基準価格も6万円を超えた。10年近く、この投信を持っていれば、預けた資金が6倍になったことを意味するらしいが、これはこの低金利時代に驚異的な数字だと思う。こような驚異的な運用の秘密が、このような藤野さんの行動にあるような気がする。ありがとうがあふれる会社に投資すれば、会社の雰囲気がよくなり、その結果会社の業績も良くなるような気がするからだ。

この点は、藤野さんに確認したわけではないが、人の幸せに基づかない繁栄は永続的ではないような気がする。

 

7月の公開フォーラムの案内

 

 

 

 

 

できるだけ多くの人に拡散して、若者から日本を変えたいと思っています。

2021年6月28日 阿比留正弘

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